未来を決めすぎないという選択 〜「今」にゆだねる快適な生き方〜

60代

わたしたちはよく「ゴールを決めてから動きましょう」と言われます。

たしかに、目指すべき目的地が明確であれば、そこへ向かう道筋も見えやすく、達成感も得やすいもの。

でも人生には、すぐには見通せない大きな流れや、予想もつかない変化がたくさんあります。

そういうとき、あえて「ゴールを決めない」という生き方も、実はとても自然で柔軟な選択なのではないかと思っています。

成り行きに身をゆだねるということ

「成り行き任せ」と聞くと、なんとなく消極的に聞こえるかもしれません。
でも本当にそうでしょうか。

自分の内側の感覚に素直に、外から与えられるタイミングや出来事に逆らわず、そこに最適なアクションを一つずつ重ねていくことは、むしろとても積極的な生き方です。

流れの中で判断を重ねていくと、不思議なことに、大きな決断が必要なときにも自然と「これだ」と思える選択ができるようになります。

無理に未来を決めつけず、流れの中で育まれた判断力は、わたしたちをより自然なかたちで導いてくれるんです。

「今」の判断が未来をつくる

未来には、いくつもの選択肢があります。

そのすべてを事前に予測して「これが正解だ」と決めることは、とても難しい。
むしろ、今この瞬間の選択や行動が、少しずつその先の未来を形づくっていく――その視点でいるほうが、心にゆとりが生まれ、柔らかな気持ちで前に進めます。

「今」を丁寧に選ぶ。
その積み重ねが、「自分にとっての最善の未来」につながっている――
そんなことに気づくことが実際にあるんです。

「もう終わった」と思ったあとに開けた道

たとえば私自身の体験を少しだけ。

ずっと習っていた日本舞踊の師匠が亡くなられたとき、「ああ、これで私の踊りの時間も終わったな」と思いました。

お稽古はお金もかかりますし、時間も必要です。
何より、私はプロの踊り手になるわけではなく、あくまで趣味としての習いごと。
そこにこれ以上負担をかける意味があるのだろうかと、心の中でそっと幕を下ろしたつもりでした。

ところが、そんなある日、別の流派のお師匠さんからお声がけをいただいたのです。

最初は迷いました。「いえ、もう私は……」と断るつもりだったのです。
でも、ふと気持ちが動いて、そのお誘いに応じてみたところ、思いもよらない道がひとつ、目の前に現れました。

今までとは流派も教え方もまったく異なり、戸惑いもありましたが、新しい学びの連続で、毎回のお稽古がとても新鮮でした。

気がつけば、また踊りが好きになっている自分がいて、師匠の一言に背中を押されなければ、この感覚には二度と出会えなかったかもしれません。

もしあのとき、「もうやりません」と断っていたら、それはそれでまた別の未来があったでしょう。
でも、あきらかに今よりも、どこか色あせたものだったのではないか――そんな気が。

そして、せっかくもう一度始めると決めたからには、真剣に向き合う。
そうやってひとつの流れに乗っていくと、不思議とまた新しいご縁や機会がつながってくるということを実感しています。

花の仕事でも、流れに委ねてきた

私が長年続けている「花」の仕事でも、実は大きな節目がいくつもありました。

仕事として花に関わるなかで、進むべきか、手放すべきか、変えるべきか――迷った場面も数えきれないほどあります。

そのたび、明確にゴールを描いて決断したこともありますが、実際には「成り行きに任せてみよう」と思いながら流れに乗ってきたことの方が多いかもしれません。

もちろん、何もかも受け身というわけではありません。
「こうしよう」と即断即決したこともたくさんあります。
ただ、そうした決断はどれも近い未来の中で、自分の手で動かせる範囲のことばかりでした。

どちらのパターンにおいても、私が大切にしてきたのは、「決めたらやる」という覚悟です。

どんなに小さな選択でも、自分で「やる」と決めたなら、そこに心を込めて向き合う。
やると決めたからには、流されるのではなく、自分の意思で歩んでいく。

その積み重ねが、信頼や実績や、次の機会につながっていったのだと強く感じています。

決めないことで広がる可能性

未来をひとつの「ゴール」に決めてしまうと、それ以外の可能性を自分で閉じてしまうことがあります。

もちろん、ある程度の方向性を持つことは大切。
でも、あまりにきっちりと決めすぎてしまうと、「そのとおりにいかない自分」に対して、余計なプレッシャーや焦りを感じてしまうこともあります。

だからこそ、あえてゴールを明確にせずに「今、できること」「今、心地よく感じること」に集中する。その結果、見えてくる未来に対して、また改めて最適な選択をしていく。

この循環こそが、豊かで快適な生き方につながるのではないでしょうか。

大人の柔軟さが未来を変える

60代という節目にさしかかると、「これからの人生、どう生きようか」「まだ何か始められるのだろうか」と考えることもあるでしょう。

そんなときこそ、無理に未来を決めようとせず、心と身体の声に耳をすませ、「今できること」に心を込める。
そうすれば、おのずと次の扉が開いていく。

年齢を重ねたからこそできる、力を抜いた柔軟な生き方。
大人の余裕としなやかさが、未来をより豊かにしていくんだと思います。

□ 【無料進呈】自分と向き合うワークシート

▼ダウンロードはこちらから
「自分と向き合うワークシート

未来を決めすぎず、「今」に委ねる生き方を意識するときに役立つ書き込み式のワークシートです。
思いのままに書いてみてくださいね。

カテゴリー