画像はギャラリー・サンカイビより
日本を代表する美術家・篠田桃紅(しのだ とうこう)さんは、1913年に岐阜県で生まれ、107歳まで創作を続けた方です。
書でもなく絵でもない、独自の「墨象(ぼくしょう)」という表現で世界を魅了しました。
筆と墨を用いながら、伝統的な書道に縛られない自由な抽象表現を確立し、その作品はニューヨーク近代美術館(MoMA)や大英博物館など、世界中の美術館に収蔵されています。
100歳を超えても現役で生きる姿
桃紅さんが多くの人を惹きつける理由のひとつは、その年齢を超えた活動力です。
90歳を過ぎても個展を開催し、100歳を超えても毎日筆を取り続けたといいます。
「歳をとったからといって、できない理由にはならない」という姿勢は、わたしたちが日常のなかで弱気になりそうなとき、大きな励ましになりますよね。
言葉に宿る人生哲学
桃紅さんは、その作品だけでなく言葉でも多くの人を魅了しました。
著書には『一〇三歳になってわかったこと』『百歳の力』『人生は一本の線』などがあります。
どれも、人生を重ねた人だからこそ語れる、飾らない言葉に満ちています。
例えば、こんな言葉があります。
「老いることは生きること」
「人は未完成だから面白い」
「過去は振り返らない」
老いを否定的にとらえず、「それもまた生の一部」と受け入れる姿勢は、加齢をネガティブに考えがちな現代人に新しい視点を与えてくれます。
シンプルな暮らしと美学
桃紅さんの暮らしは、作品と同じようにシンプルでした。
余計なものを持たず、静かに、淡々と。
墨のにじみや線が生み出す余白の美は、そのまま彼女の人生哲学を映しているかのようです。
歳を重ねるほどに、ものを増やすのではなく削ぎ落としていく。
その潔さは、多くの人が目指す「ミニマルライフ」の先駆けともいえるかもしれません。
わたしたちへの問いかけ
60代を迎えると、「もう新しいことは無理かもしれない」と思う瞬間があるかもしれません。
でも、107歳まで創作を続けた篠田桃紅さんを思えば、「まだこれから」と背中を押される気がするんですよね。
日々の暮らしの中で、わたしたちも小さなことを続けることができます。
朝の散歩を習慣にすること。
好きな本を読み返すこと。
花を一輪、部屋に飾ること。
その積み重ねが、人生を豊かにしていくのだと思います。
桃紅さんを思うとき、わたしはつい自分に問いかけるんです。
「私自身は、どんなふうに歳を重ねていきたいだろう?」と。
その問いに向き合うことこそ、人生を美しく育てる第一歩なのかもしれません。
📚 読者へのおすすめ本
篠田桃紅さんの言葉に触れたい方へ、代表的な著書をいくつかご紹介します。
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『一〇三歳になってわかったこと』(幻冬舎)
103歳のときに出版されたエッセイ。長寿を重ねたからこそ語れる「人生の本質」がシンプルな言葉で綴られています。 -
『百歳の力』(集英社インターナショナル)
100歳を迎えてもなお前向きに生きる力の秘密を、自らの体験をもとに語った一冊。読むだけで勇気が湧いてきます。 -
『人生は一本の線』(講談社現代新書)
桃紅さんが歩んできた道のりと、その中で育まれた美学を語るエッセイ。作品づくりと人生が「一本の線」でつながっていることを感じさせます。
🌿 作品そのものに触れたい方は、美術館や画集を訪ねるのもおすすめです。
桃紅さんの生き方や言葉は、私たちがこれからの人生をどう過ごすかを考える、大きなヒントを与えてくれます。